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MAKE the RULE 気候保護法案成立に向けて

12月7日、青森市の県民福祉プラザにて、MAKE the RULEセミナーが開かれた。基調講演はNPO法人環境文明21共同代表の加藤三郎氏。加藤三郎氏は厚生省から環境庁待機保全課に出向してから一貫して環境政策に取り組み、日本初のOECD環境担当書記官としてパリに駐在するなど、日本の環境保護行政の生き字引的存在。「温暖化交渉の最新動向と国内対策の課題」をテーマに講演を聴いた。

 

セミナーは、MAKE the RULEキャンペーン実行委員長のシロベエ氏からのあいさつから始まった。シロベエ氏は、北極からわざわざこのキャンペーンのため来日している。北極では氷がどんどん溶け出し、アザラシなどの獲物が獲りづらくなり、仲間がたくさん飢えに苦しんでいるという。地球温暖化をストップさせるため、頑張っているとのことだ。

加藤三郎氏の講演は、1997年に議決された京都議定書に対して、各国の取り組みと、日本の現状についての最新報告である。京都議定書は、先進国におけるCO2等の削減率を1990年を基準年として、各国別に定めたものだ。これによると、日本の削減率は2008年までに−6%の削減が義務となっているのだが、2007年度の排出量は逆に8.7%も増加してしまった。つまり15%近くが未達成になっているのである。

削減目標が達成されないとどうなるか。京都議定書では排出権取引についても定められているが、これが利用できなくなる上に、超過した排出量の3割増が次の削減義務値に上乗せされる。そのため、未達成分をどうにかしようとすれば、2008年度中に排出量の少ない国から排出権を買わなくてはならなくなる。日本にとって1%の超過分は1260万トンにのぼり、この1%分の排出枠を購入すると、年間300〜500億円になるという。15%の超過分が残っているとすれば、そのうち3.8%を森林吸収分として控除しても、年間約3300〜5500億円が必要になる計算だ。2012年までの5年間それが続けば、約1兆6500〜2兆7500億という膨大な額になる。

ただでも国の借金が膨らんでいるのに、基準を達成できないためにそれだけのお金を中国やロシアに支払わなくてはならない。それが嫌なら京都議定書からの脱退を表明するしかないが、世界5位の排出国である日本が、国際的な地球温暖化防止プログラムに背を向けてしまうということは現実的に考えにくい。その影響は欧米への輸出制限などのような形で大きなペナルティーを負うことになるだろうと加藤三郎氏は指摘する。

なぜこうなってしまったのか。日本以外の国に目を向けると、例えばイギリスでは、10月にエネルギー・気候変動省を設置し、11月には気候変動法を成立させて、国家を挙げて削減義務達成に向けた取り組みを進めており、2020年までに1990年度比26%、2050年までに80%以上の削減目標を設定している。環境政策では特に力を入れているドイツでも、2020年に1990年度比40%、2050年までに80%という達成目標を示している。ブッシュ政権で京都議定書から離脱し国際的な非難を浴びたアメリカでも、オバマ次期大統領は企業に対するキャップ付き排出権取引を活用して2050年までに80%削減を公約した。

さて、日本はどうなっているかと言うと、2020年までの達成目標は2009年度に策定するとして現在は未定。2050年までの目標においても、他の国が1990年度比で考えているのに対し、「現状比」で60〜80%としているなど、明らかに取り組みに対して遅れている。遅れているというより、これは本気で取り組む気がないのではないかとさえ疑わせる状況である。日本はできることは全てやっていると言うのだが、日本ほど技術力の高い国が、「もうだめです、無理です」と簡単にあきらめていいのだろうか。加藤三郎氏は、日本はまだその持てる技術を有効に使っていないと指摘する。

日本では経団連を中心に、産業界がこの京都議定書に対して否定的であり、排出枠規制についても、経済効率の貫徹という自由主義経済の原則を損なうと反対しているという。これではまるで、1960年代、公害で多くの人々を苦しめた企業経営者の認識そのままではないだろうか。自由主義経済だから何をやってもいい、利益追求が企業の存在意義だとやっていたら、今世界を不況の嵐に巻き込んだサブプライムローン問題をも肯定することにもなるだろう。そうした経済界の反発に対して、政府も及び腰となり、その結果が削減義務の大幅超過を生んでいる。

この政府、経済界の不作為の責任は、一体誰がとるのだろうか。言うまでもなく、先に述べた排出権購入などによって国民がその税金で負担しなくてはならないのである。これに対して、なぜ日本の国民は怒りを示さないのか。そう加藤三郎氏は憤るのである。

MAKE the RULEキャンペーンは、地球規模での気温上昇を2度に抑えることを目標に行動するための行動指針を、気候変動法といった実効性ある法律を制定してとりくもうという運動である。日本においても、この津軽においても、異常気象を肌で感じることが多くなってきた。ちょっと前までは温暖化対策といっても孫やそのまた孫の時代の話だろうとたかをくくっていたわけだが、そうではなく、現実に、今の私たち自身の問題として取り組まなければ本当に大変なことになる。家庭の節電とかできるところからやろう、というレベルではなく、産業構造やエネルギー利用方法に至る大きな改革を私たちは求められている。

もし、この日本で、お金があるんだからとたいして削減努力もせず、他の国から排出権を買い続けるだけになったとすればどうなるだろう。国の財政の問題だけではない。今世界中で、環境対策を新たなビジネスとしてしくみや技術に磨きをかけてる中で、日本はそのビジネスモデルの枠内に入れなくなるということでもある。環境・エネルギー先進国の商品、システムを未来永劫買い続けなくてはならないということだ。日本が今後も経済大国としての地位を維持しようとするのであれば、環境技術に磨きをかけ、その技術を世界に輸出できるような国を目指さなくてはならない。その一つの指標が削減率の達成にあるとすれば、それに本気で取り組むのは当たり前のことである。


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